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第十七回
「虫の旬 秋(7)」
(3)スズメバチ(幼虫、さなぎ、成虫)(4)

 スズメバチ類は美味しいだけではなく、栄養学的にみても良質な食品である。片桐充昭氏らの研究成果を要約し、クロスズメバチとキイロスズメバチのタンパク質組成を紹介したい。

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●表─1 スズメバチ幼虫の水分およびタンパク質含量
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クロスズメバチ キイロスズメバチ
水分含量(%) 67.3 58.2
湿重量/個(g) 0.33 0.94
乾燥重量/個(g) 0.11 0.39
タンパク質含量(%)
(生体)
15.1 22.7
タンパク質含量(%)
(乾燥粉末)
46.2 54.3
タンパク質/個(mg) 50.4 213.2
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(考察)100グラム当たりのタンパク質含量は、クロスズメバチ15.3g、キイロスズメバチ22.7gである。五訂食品成分表における牛肉などと比べて差異がなく、良質なタンパク質食品であることが確認できる。

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●表─2 スズメバチ幼虫のアミノ酸組成  %(W/W)
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クロスズメバチ キイロスズメバチ
アスパラギン酸(Asp) 9.0 8.1
トレオニン(Thr) 4.2 4.3
セリン(Ser) 4.1 4.0
グルタミン酸(Glu) 15.0 14.2
グリシン(Gly) 5.8 6.8
システイン(Cys) 1.0 1.2
バリン(Val) 5.5 6.1
メチオニン(Met) 1.8 1.6
イソロイシン(Ile) 4.6 4.7
ロイシン(Leu) 7.6 7.6
チロシン(Tyr) 6.5 5.0
フェニルアラニン(Phe) 3.9 3.7
リシン(Lys) 6.4 7.1
ヒスチジン(His) 3.0 2.9
アルギニン(Arg) 5.0 5.6
プロリン(Pro) 11.2 11.2
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(考察)スズメバチ幼虫のタンパク質中にはグルタミン酸が高率で含まれ、次いでプロリンが多い。グルタミン酸は昆布などにふくまれ、酸味、旨味をともなう。
 グルタミン酸は節足動物の興奮性神経の神経伝達物質であることがしられている。抑制性神経の神経伝達物質はγ-アミノ酪酸である。グルタミン酸が神経末端から放出されることによって筋肉は収縮し、γ-アミノ酪酸が放出されることによって緊張を和らげている。ちなみに脊椎動物はアセチルコリンが興奮性神経の神経伝達物質であるが、節足動物のように抑制性神経は末端に存在せず、抑制はより上位の脊髄によって行われる。ところが脊椎動物でも脳だけは節足動物と同じく細胞に興奮性神経と抑制性神経が存在し、その多くは同様にグルタミン酸とγ-アミノ酪酸が伝達物質として機能している。
 プロリンは表皮細胞増殖促進活性、コラーゲン合成促進活性、角質層保湿作用などがあり、健康な肌を保ち、シミや肌荒れを防ぐ効果があるとされている。

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●表─3 スズメバチ幼虫のアミノ酸スコア
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1973年FAO/WHOパターンによる評価
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        アミノ酸スコア     制限アミノ酸
クロスズメバチ   75       SAA(含硫アミノ酸)
 ※その他のアミノ酸価は99?162

キイロスズメバチ  77       SAA(含硫アミノ酸)
 ※その他のアミノ酸価は103?138
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1985年FAO/WHO/UNUパターン(2?5歳)による評価
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        アミノ酸スコア     制限アミノ酸
クロスズメバチ   100          無
 ※アミノ酸価は104?158

キイロスズメバチ  100          無
 ※アミノ酸価は106?166
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(考察)アミノ酸スコアは食品中のタンパク質を評価するもので、100が最高スコアである。スズメバチは1973年評価では、含硫アミノ酸以外のアミノ酸価は100をこえている。1985年評価ではアミノ酸価はすべて100をこえ、したがってアミノ酸スコアは100である。このことからスズメバチ幼虫は肉類に匹敵する優れたタンパク質組成であることが理解される。


参考文献
片桐充昭、友竹浩之、久保田芳美(2006年):「食用昆虫の栄養学的特性1 ?スズメバチ幼虫・トビゲラ幼虫?」、『日本栄養・食糧学会60回講演要旨集』、385頁。
片桐充昭、友竹浩之、奥山涼子(2004年):「スズメバチ幼虫のタンパク質構成アミノ酸分析」、『飯田女子短期大学紀要』、第21集、64-72頁。
川合述史(1997年):『一寸の虫にも十分の毒』、講談社。

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