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第九回
「茗荷のお話し」
「忘れる」と「忙しい」

 「忘れる」と「忙しい」二つの言葉に共通している点は、心を亡くすることだと思います。どんなに忙しい時にも心を亡くさず、目の前の出来事を良く観察して、優先順位を付けて、先に済まさなければ成らないことから、無駄なく、確実に片付けて行きましょうと教えているような気がする。  

茗荷:名前の由来

 古くから茗荷を食べると物忘れをすると言います。其の由来は昔、周梨槃特(スリバントク)と言う男が居て、物覚えが悪い、其れを心配した兄は彼に勉強をさせようと厳しく接します。嫌がるバントクの悲鳴がお釈迦様の耳に入り、お釈迦様は彼を弟子にします。弟子になったバントクは一生懸命にお釈迦様のお世話をして、お釈迦様は「バントク良く出来ましたね」と褒めます。バントクは褒められるとまた一生懸命お世話します。そして、また褒められます。熱心に修行をして優れた人物となりますが、自分の名前を覚える事さえ出来ない。お釈迦様は不憫に思い、木札に名前を書いて背中に荷わせました。それでも名札がある事さえ忘れるのです。後年、バントクの死後、お墓に見慣れぬ草が生えて、一生名札を荷っていた彼を偲んで茗荷と名づけたと言う。よって茗荷を食べても物忘れをする事はありません。

原産地

 お釈迦様が登場するのですから、インド、中国を置いては考えられませんが、ネットで検索すると原産地は東アジアとなっており、インドが入っていません。日本では九州から本州にかけて自生している。

 私が子供の頃、田へ行く道の傍らに茗荷が自生していて、父が夏場には採っていたのを思い出します。採り尽くさない様に必要な量だけ採るようにしていれば、毎年楽しむ事が出来ます。

 日本で栽培が多いのは私の故郷、高知県だそうで私も茗荷は好きです。

 栽培されているのは日本だけで原産地では栽培されていないと言うことですが、原産地の食事に合わないのでしょうか。

茗荷の料理

 茗荷は6月頃から秋前にかけて収穫しますので、素麺や冷ヤッコの薬味には最高ですね。他に生食、味噌汁、キュウリやショウガとの塩もみ、てんぷら、酢漬け、糠づけ等も良い、少し変った食べ方として焼いてから味噌をつけて食べるのも一興です。色々な料理に使える便利な食材と言えます。

落語の茗荷

 落語にも茗荷が出てきます。大津の宿場町、その宿場から外れたところに一軒だけ、ポツ〜ンと宿屋さんがありました。宿場から外れていて客が全く無い、

 珍しく泊まった客が用心の為、主人に二百両の金を預けました。

 宿の夫婦は茗荷を食べると物忘れをすると言う話しを思い出して、客に茗荷をたくさん食べさせれば、預けた金のことを忘れて出立するだろうと悪巧みを企てました。

 夕飯に鮒の塩焼きに茗荷を添えて、茗荷のてんぷら、茗荷のおすまし、茗荷ご飯に茗荷の酢味噌和え、更に、胡麻は食欲を増進するからと胡麻をたくさん振りかけて、無理矢理に茗荷を食べさせました。

 翌朝も茗荷の味噌汁、茗荷の漬物とまるで追い討ちを掛けるように茗荷を食べさせました。

 客は一旦、二百両の金を忘れて出立しましたが、どうにか思い出して戻って来て、金を受け取り、「さいならごめん」と行ってしまってから、宿の夫婦は「しまった、宿賃払うの、忘れていかはったがな」と言うのがこの落語の「さげ」となって居ります。

 いつの世にも悪巧みと言うものはうまく行かないものですね。

 参考URL「茗荷の宿」

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