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メルヘンの野食歳時記第三回
「きのこ狩り」
正しいきのこ狩り

最初に山菜採りの基本を載せましたが、これがきのこ採りにそのままそっくり適用できるかと言うとそうではありません。山菜を採るときに比べてさらに慎重な態度・姿勢が求められます。

まず、植物と違ってきのこはその個体ごとの変異が極めて大きく全くの別種に見える場合さえあります。また、全てのきのこに名前が付いているわけでもありません。現在、名前のついているものはほんの一部にすぎないということです。

さらに、一番深刻なのは毒キノコに関する迷信がその全てが完全に否定されているにも関わらず、まだまだ世の中にしっかり根付いてしまっていることです。たとえば、色の派手なキノコは毒とか…。これらの迷信を頭から完全に払拭しなければ野生のキノコには手を出してはいけません。  

そしてやっぱり確実なのは最初のうちは信頼できる専門家に付いてきてもらうことです。やはり実物を見ないと種を見定める感覚は見に付かないし、その場でアドバイスをもらった方が頭に残りやすいものです。まぁ、専門家でも時々間違ったりするのですがね…。それがきのこの奥深さでもあります。

ここからは、以前掲載した山菜採りの基礎と比較しつつきのこ狩りの基礎について述べていきましょう。

行く前編

イ.図鑑を買って種類を覚えよう


山菜の図鑑は1冊で十分と述べましたがきのこの図鑑は1冊では不十分です。上でも述べたように個体間の変異が植物に比べてきわめて大きく図鑑の写真と実物が大きくかけ離れていることはよくあることです。なので、最低2冊は持っておいた方が安心です。きのこの図鑑は食用キノコに特化したものと学術的な図鑑に二分化していますが、食用きのこを採るだけなら前者と後者をそれぞれ1冊ずつ持っておくのがおすすめです。


ロ.場所を決めよう


これも同じようなものです。ただし、山菜よりは限られた環境に集中していると思います。きのこは大別すれば菌根菌(樹木と共生して生きるきのこ)と腐朽菌(倒木や落ち葉などを分解して生きるきのこ)に分けられるので探し方は多少異なります。


ハ.旬を見極めて


その発生適期になれば次々と発生を繰り返すので旬は長いと言え、キノコの本体そのものはすばやく成長してすぐに腐ってしまうので旬は短いともいえます。また、気温だけでなく降水量なども発生に関わってくるので植物よりもその発生時期を予想が難しいことは確かです。


採る時編

イ.マナーを守ろう


基本的な考えは一緒で、まだ小さな幼菌や既に胞子を飛ばし終えたような老菌は採らないように。いわゆるキノコとされる子実体と呼ばれる部分は植物では花にあたり本体ではないので、全部採ってもその菌自体が無くなってしまう訳ではないのですが、それでも乱獲は慎みましょう。


ロ.採集道具はあなたの手


キノコの新しさや古さは視覚で分かり、発生場所を荒らさないためにも採取にはナイフを用いた方が賢明です。手でごっそり土や木片まで採ってしまうと翌年以降にも影響が出てしまうかもしれません。そして採った跡はこっそり原状回復しておきましょう。


ハ.決め手は"匂い"


これはキノコにとってはあまりあてにならない指標ですが、不快臭のするキノコは避けることにしてもいいでしょう。もちろん逆は論外です。


二.疑わしきは黒


これはほぼ当てはまります。食用きのこを採る時は似ている毒キノコを常に意識しながら採りましょう。山菜より中毒する危険性は遥かに高いと言えるのでさらに慎重に。


イ.下ごしらえは迅速に


これも当てはまります。ただし、きのこはアク抜きよりも虫抜きの方が重要です。特に気温の高い時期になると若いうちから虫が中に入り込んでいます。タンパク質源と考えて気にしなければそれでいいのですが、やはり取っておいた方が安心です。虫抜きは塩水に一晩漬けておけば大丈夫です。下に溜まっている虫の死骸は見なかったことにして水に流しましょう。


ロ.料理法は素材の個性を失わせずに


キノコは山菜と異なり、その個性は調理によって失われることがあまりない、逆にその料理がそのきのこの風味で染まってしまいます。つまり、キノコ料理はいかにその個性に合った調理法を選択するかが重要になるのです。まずは図鑑に載っている料理を参考にしてみましょう。また、野生のキノコの生食は中毒の危険もある(どんな成分が含まれているか実は完全には分かっていない)ので避けたほうがいいでしょう(一部の例外を除いて)。


ハ.たくさん採れたら保存しよう


これは山菜の場合と一緒で適切な処理を施せば長期間保存することも可能となります。ほとんどの場合、乾燥か冷凍か塩蔵でしょうか。


裏技編

♠ ブログを活用する


これも同様ですが、山菜より発生の傾向を見定めることが難しいので注意が必要です。あと、同定を間違っている例も少なからず見られるので鵜呑みにしないように。


♠ こっそり違う季節に行ってみる


残念ながらこれは全くキノコには応用できません。違う季節に行ったらキノコは消えてますから…。


♠ マイナーなものをあえて採る


これはキノコにも言えるでしょう。しかし、狙い以外のキノコも確実に見分けられるという自信が無ければやれないのですが。


♠ 困ったら藪に突っ込む


キノコは藪というより樹に登っていくのがより効率的な若さの発揮の仕方です。手の届かない高いところにあるキノコは普通の人はわざわざ採りません。飛び道具を利用してもいいでしょう。


♠ 自宅の庭に植えてみる


腐朽菌の場合、キノコの生えている原木を持ち帰れば可能ですが、その行為が環境を荒らすことにもつながるのでほどほどに。菌根菌の場合は不可能です。むしろ挑戦する猛者が現れて欲しいのですが…。


♠ とにかく天ぷらにする


きのこは水分が多いので天ぷらにはあまり向きません。キノコの場合はとにかく鍋にするのが無難な選択でしょうか。ホイル焼きにすればきのこそのものの味を確かめることができます。初めてのキノコは、まずホイル焼きにしてみてその個性を確かめるのもうまいやり方かもしれませんね。


きのこと山菜の採り方の比較は以上になります。読んでみて感じるかもしれませんが、きのこの場合の方がより慎重な言い方になっています。それほど野生のキノコを採って食べるという行為は危険を伴うということなのです。みなさまもこれを足がかりにして、楽しいきのこ狩りの世界に踏み入ってください。

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